バイオインフォマティックスにより開発された鳥型結核菌の分子疫学的手法

タイトル バイオインフォマティックスにより開発された鳥型結核菌の分子疫学的手法
担当機関 疫学研究チーム
研究課題名
研究期間 2001~2006
研究担当者 永田礼子
吉原一浩
小林秀樹
森 康行
秦 英司
西森 敬
田中 聖
内田郁夫
発行年度 2006
要約  抗酸菌のゲノムデータベースの生物情報学的比較解析等により、鳥型結核菌のゲノム上に散在する多型縦列反復配列領域を特定した。対応する多種類の多型縦列反復配列領域の反復数の並びは、鳥型結核菌系統樹における位置情報を持った遺伝子型となり、鳥類・家畜・野生動物・人における鳥型結核菌の動態を迅速、簡便、詳細に追跡するために用いる。
キーワード 鳥型結核菌、バイオインフォマティックス、VNTR、マンハッタン距離、系統樹解析
背景・ねらい  Mycobacterium avium(鳥型結核菌)は分類学的には届出伝染病の鶏結核病、豚の非結核性抗酸菌症、法定伝染病のヨーネ病および人の非結核性抗酸菌症の原因菌が含まれるが、人獣共通感染症として鳥型結核菌の動態は明確になっていない。従来の血清型や遺伝子挿入配列(IS)型のような解像度の劣るマーカーのみの短絡的な考察は、人獣共通感染症の原因菌としてのリスク評価を誤り、風評被害を生む危険性がある。IS-RFLPによる型別は菌株によって保有するISに相違があるばかりでなく、解像度の高い解析のためには十分なコピー数の保有を必要とし、しかも時間、機器及び熟練を要する。そこで、鳥類・家畜・野生動物・人において分離される鳥型結核菌を簡便に且つ詳細に区別し、鳥型結核菌の動態の解析に有用である単一の分子疫学的手法として、ゲノム上に散在する多型性を示す縦列反復配列領域(VNTR領域)を用いたVNTR型別法を開発する。
成果の内容・特徴
  1. 加熱処理菌体浮遊液上清をテンプレートとするPCRを実施する。PCRはバイオインフォマティックスにより検索されたMATR-1からMATR-16までの16ヶ所の多型縦列反復配列領域を増幅する。アガロース電気泳動法により、含まれる縦列反復配列の反復数を推測し、この数値を並べたものをアリルプロファイルとする(図1)。なお、ヨーネ菌亜種はMATR-0領域を含む17ヶ所を解析する。
  2. 参照株より得られたアリルプロファイルから、マンハッタン距離法にて距離行列を求め、フッチマーゴリアス法にて系統樹解析することにより、図2に示す系統樹が得られた。この系統樹は既報の系統関係および多型縦列反復配列領域に存在するSNP情報の系統樹解析により支持された。
  3. 野外分離株62株の検討の結果、血清型別のHunter-Gaston識別指数0.82にくらべ、VNTR法は0.96と高い識別能を示し、しかも血清型別ができなかった株を含めたすべての株を型別した。
成果の活用面・留意点
  1. PCRを使ったVNTR型別は菌株の生死を問わず、1個のコロニーからも型別が可能であり、迅速、簡便で応用範囲の広い方法である。既に青森、岩手、千葉、長野、岐阜、大分等の各県において動物衛生研究所研究報告資料を基に独自にヨーネ菌亜種のVNTR型別を実施している。
  2. プライマーの配列、実施要領、系統樹解析法等に関しては動物衛生研究所研究報告(2002,109:25-32)
    <http://niah.naro.affrc.go.jp/publication/kenpo/2002/109-4.pdf>を参照のこと。
  3. MATR-10領域は約20bp異なる2種類のPCR増幅産物がえられ、しかも産物の得られない株が存在するため、鳥型結核菌の全般的な系統樹解析に用いない。MATR-16領域において縦列反復数の増減から推測されるサイズとは異るPCR増幅産物の得られる株がある。
  4. 分子疫学的なデータは各菌株に付帯する疫学情報とともに総合的に判断されなければならない。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010016269
カテゴリ データベース 風評

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