沖縄県の黒島におけるダニ撲滅対策の経済的評価

タイトル 沖縄県の黒島におけるダニ撲滅対策の経済的評価
担当機関 家畜衛生試験場
研究課題名
研究期間 1994~1996
研究担当者
発行年度 1994
要約 平成元年に沖縄県の黒島において行われたバベシア病およびオウシマダニ撲滅対策について,経済疫学手法のひとつである費用・便益(Cost-benefit)分析法を用いて経済的評価を行ったところ,費用・便益比が1:1.32となり,この対策の経済的正当性が示唆された。
背景・ねらい  畜産物輸入自由化に伴い,我国の畜産業は一層の効率化,コストダウンを強いられており,家畜衛生対策に対しても経済性を考慮する必要性が増大している。その社会的ニーズに答えるため,欧米諸国の獣医・畜産学,農業経済学分野でしばしば用いられる費用・便益分析法(Cost-benefit analysis)を導入し,我国の家畜衛生対策への応用,手法の普及についての検討を行った。
 沖縄県八重山群島では,古くよりオウシマダニおよびそれによって媒介される法定伝染病の牛バベシア病による肉牛の被害があり,今回この経済評価手法の実例として,平成元年,八重山群島の黒島(面積9.83km2,人工200人,肉牛頭数1800頭,1990年時,図1参照)にて集中的に行われたオウシマダニ撲滅対策を取り上げ,その経済的評価を行った。
成果の内容・特徴
  1.  沖縄県八重山家畜保険衛生所,家畜衛生試験場,竹富町役場,農業共同組合,共済診療所,農家などに保管されている昭和56年から平成5年にかけての疾病の発生状況,家畜の増体量,その他ダニ駆除に関する情報や資料が収集され,それらを活用して費用・便益分析の計算を行った(表1)。

  2.  農業協同組合に保管されていた家畜市場の競り記録を用いて増体量に関するデータベースを作成し,オウシマダニ撲滅による増体量の変動や他の事業による増体量の影響を時系列的に調べた。その結果,他の事業による増体量の影響は比較的少なく,ダニ撲滅によって増加した増体量は0.05-0.1kg/dayであると算出された。
  3.  ダニ撲滅運動に要した主な費用は,殺ダニ剤購入費および薬剤投与の労賃であった。一方主な便益(利益)は牛の増体量の上昇,バベシア病が撲滅されたことによる便益(死亡家畜数や治療費の軽減),および牛を島外(主に石垣島,図1参照)に移動させる際の手続きの簡便化による利益の向上であった。
  4.  増体量の増加値を0.05kgから0.1kg/dayの範囲として費用・便益計算の感受性分析を行ったところ,費用・便益費が1:1から1:1.7(平均1:1.32,表1参照)となり,いずれの増加値をとっても経済的正当性があることが示唆された。
成果の活用面・留意点
  1.  今回導入された費用・便益分析法は,今後我国において開発される各種家畜衛生対策に対してその実用面での評価を可能とさせ,また複数の衛生対策が存在する場合に,重要なものを選択する指標として広く用いられることが考えられる。
  2.  沖縄県では現在でもオウシマダニ汚染地域があり,それらの地域において今回の撲滅運動と同様のプログラムを遂行する際に,このデータを過去の例の情報として農家に紹介し,ダニ撲滅運動の重要性を訴えることが可能である。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010016013
カテゴリ コスト 飼育技術 データベース 肉牛 薬剤

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