リモートセンシングと生態プロセスモデルの協働によるCO2フラックスの動的評価手法

タイトル リモートセンシングと生態プロセスモデルの協働によるCO2フラックスの動的評価手法
担当機関 (独)農業環境技術研究所
研究課題名
研究期間 1998~2003
研究担当者 井上吉雄
発行年度 2004
要約 土壌-植物-大気系の熱・水輸送および光合成過程のプロセスモデルのパラメータをリモートセンシング実測値によって随時最適化する協働システムを構築した。これによりCO2フラックスや植物生長,土壌水分等のダイナミックな変化を精度よく評価できる。
背景・ねらい 農耕地生態系-大気間のCO2フラックスや植物生長は,土壌環境,放射環境,および植物の生理生態的反応とともにダイナミックに変化する。したがって,これらを精度よくかつ動的に予測するためには,多数の因子を組み込めるプロセスモデルが有用である。しかし,必要データを広域的に入手することが困難,あるいはパラメータ決定が容易でない等のために,モデル単独では精度と汎用性を確保することが難しい。一方,リモートセンシング情報は広域性・即時性にすぐれるが,基本的に瞬時的な物理信号であるため,それを生物学的意味に的確に関連づけること,および動的評価に結びつけることが必要である。そこで,両者を互いに補完し,より高精度でかつ動的に土壌-植物-大気系の変化を予測するために,リモートセンシングと生態プロセスモデルを協働させる手法を考案する。
成果の内容・特徴
  1. 土壌-植物-大気系の熱・水収支と植物生理過程を組み込んだ生態プロセスモデルを開発した。本モデルは入力データやパラメータが完全に得られる場合には生長や蒸発散等の諸変量を的確に予測し得る。ただし,実測困難あるいは不確定なパラメータがあると結果は大きく影響される。
  2. そこで,この生態プロセスモデルに可視・近赤外域の反射率と表面温度を算出するモデルを開発して組み込み,リモートセンシング信号を同時に出力するモデルを構築した。さらに、このモデルにより出力されるリモートセンシング信号(反射率や表面温度)の予測値を実測値と対比させ,両者の残差を最小化するように,モデル内の未知パラメータを指定し自動的にチューニングする協働手法を構築した(図1)。
  3. たとえば土壌水分データが得られない場合でも、リモートセンシングによる植生指数NDVIの実測値を本協働システムに適用することにより,ほぼ実測値に近い土壌水分を推定でき(図2),得られた値を用いることによってバイオマス生長および生態系CO2フラックスを動的かつ高精度で予測できることを検証した。
  4. 使用する実測データ数を3点程度まで減らした場合でも比較的よい精度が維持される。さらに,NDVIに代えて熱赤外リモートセンシングによる地表面温度を用いることも可能である。
  5. 本手法はプロセスモデルとリモートセンシングを互いに補完して,植物の光合成・生長や生態系CO2・水・熱フラックスならびに土壌水分等の環境因子等の多変量を同時かつ動的に評価する方法である。この方法は光・熱等の異なる波長域の不定期かつ低頻度のリモートセンシングデータを効果的に活用できる利点がある。
成果の活用面・留意点
  1. 生態系スケールの炭素収支や蒸発散,作物生長診断等に関する種々の研究に活用できる。
  2. 対比させるシミュレーション値と実測値の等価性を確保するために,特に衛星データ等では大気補正等の物理補正モジュールを組み込むことが望ましい。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010015856
カテゴリ 植物生理 土壌環境 輸送 リモートセンシング

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