多周波マイクロ波は全天候下で作物群落特性のリモートセンシングを可能にする

タイトル 多周波マイクロ波は全天候下で作物群落特性のリモートセンシングを可能にする
担当機関 (独)農業環境技術研究所
研究課題名
研究期間 2001~2005
研究担当者 井上吉雄
発行年度 2003
要約 雲を透過し天候に左右されずに作物生育を観測できるマイクロ波領域のうち,Lバンドがバイオマスの,Cバンドが葉面積指数の,Xバンドが茎数密度の,Ka・Kuバンドが穂重量の推定にきわめて有効である。
背景・ねらい 環境保全のための精密農業管理,および地域・地球規模における農業生態系評価のために,リモートセンシングによる空間データの活用は不可欠となっている。しかし,特にモンスーンアジアのように生育期に雲の多い地帯では,光学センサは良好なデータの取得頻度が不十分な場合も多い。そのため,雲を透過するマイクロ波センサの利用が世界的に活発化しつつあるが、マイクロ波信号が植被特性にどのように効果的に結びつけられるかについては,実証データも定量的な理解もいまだ不十分な状態にある。そこで,比較的単純な系である水田を対象に,多周波数・全偏波・多入射角のマイクロ波データを取得し,群落特性との関係を解明する。
成果の内容・特徴
  1. 水田を対象に,地上約5mに設置したマイクロ波散乱計によって多周波(Ka: 35.25 GHz, Ku: 15.95 GHz,X: 9.6 GHz,C: 5.75 GHz,L: 1.26 GHzの5バンド),多偏波(水平H,垂直Vとして,HH,HV,VH,VVの4種),多入射角(25°,35°,45°,55°)の全組合み合わせにおける後方散乱信号を,移植前から収穫・耕起後までの全期間にわたって連続測定した(図1)。
  2. Lバンドの水平偏波(HH)およびクロス偏波(VHとHV)の後方散乱係数σLは群落バイオマス(生体重)Bと最も密接な関係にあり,直線回帰モデルにより推定できる(図2;B=0.4σL+8.16)。Cバンドの水平偏波およびクロス偏波の後方散乱係数σCは葉面積指数LAIと最も密接に関係しており,指数回帰モデルにより精度よく推定できる(図3;LAI=0.28 e0.31(σC+25))。
  3. XバンドσXは群落の茎数密度Sに対して高い相関関係があり,ゆるやかな指数回帰モデルにより茎密度を高精度で評価できる(図4;S=66.9e0.113(σX+35))。波数の高いKaバンドおよびKu バンドの後方散乱係数σKuと登熟期の穂重量Hとの間に密接な関係が見出された。逆指数回帰モデルにより穀実収量に関する情報を直接とらえ得る(図5;H=1.03[1-e-0.21(σKu+21)])。
成果の活用面・留意点
  1. 航空機,人工衛星から得られる合成開口レーダデータの解釈や,植被特性を定量評価するためのモデル開発,異なる周波数データの同時利用手法の開発に役立つとともに,将来の地球観測衛星・航空機センサの仕様策定の基礎となる。
  2. 本結果は水稲群落について得られたもので,類似の草本植物に適用できるが,畑地条件では,土壌水分や地面粗度の影響を考慮する必要がある。また、推定精度は観測センサ固有の感度や誤差ならびに観測条件にも依存することに留意が必要である。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010015814
カテゴリ 水田 水稲 リモートセンシング

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