タイトル |
ヘアリーベッチに含まれる植物生長阻害物質シアナミドの発見 |
担当機関 |
(独)農業環境技術研究所 |
研究課題名 |
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研究期間 |
2001~2005 |
研究担当者 |
小原裕三
石坂眞澄
藤井義晴
平舘俊太郎
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発行年度 |
2001 |
要約 |
休耕水田や遊休農地の植生・雑草管理に導入が推奨されているヘアリーベッチには,植物生育阻害作用の本体としてシアナミドが含まれている。シアナミドは窒素肥料である石灰窒素の成分として,殺虫・殺菌・除草効果のあることが知られているが,生物の体内成分としては新発見である。
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背景・ねらい |
現在,増加しつつある休耕田や耕作放棄地を粗放的に管理する目的で,マメ科牧草のヘアリーベッチの導入が薦められている。ヘアリーベッチには雑草等の生育を阻害する成分が存在することが報告されていたが,作用成分は不明であった。本研究ではその植物生育阻害物質の解明を試みた。
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成果の内容・特徴 |
- ヘアリーベッチの茎葉部より得た粗抽出液から,レタス伸長阻害活性を指標とし,全活性に留意しつつ各種のクロマトグラフィーにより植物生育阻害物質を単離し,NMR,MS,IR等によりその化学構造を解析した結果,シアナミド (cyanamide) であると同定した(図1)。シアナミドは茎葉乾重の0.1%に達する量が含まれているが,NMR,MS等のスペクトルはきわめて単純なため有機化合物とは思われず,同定が困難で,これまで見落とされてきたものと考えられる。
- ヘアリーベッチ粗抽出液に含まれるレタス下胚軸伸長阻害活性は,シアナミドによりほぼ説明できる(図2)。
- 無施肥で9日間栽培したヘアリーベッチの茎葉部に含まれるシアナミド含量は,種子に含まれるシアナミド含量の40倍に増加していたことから,シアナミドはヘアリーベッチにより生合成されていることが確認され,肥料成分(石灰窒素)の混入ではないことが明らかとなった。
- シアナミドは,種子休眠覚醒効果,除草効果,および肥料としての効果などが知られており,合成品は商品として利用されているが,これまで生物の体内成分として天然に存在することは知られていなかった。本成果は,生物からのシアナミドの最初の発見である。
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成果の活用面・留意点 |
- 本成果は,これまでに知られているヘアリーベッチの雑草抑制作用や,耐虫・耐病性を、シアナミド合成と関連して解明する大きな手がかりとなる。
- ヘアリーベッチによる家畜中毒現象が,これに含まれるシアナミドによって説明できる可能性がある。
- 今後,多様な植物種を対象に,シアナミドの存在と分布について,検索・精査する重要性を明らかにした。
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URL |
http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010015741 |
カテゴリ |
雑草
除草
水田
施肥
レタス
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