タイトル |
米の吸水過程のMRIによる観察 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所 |
研究課題名 |
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研究期間 |
2006~2010 |
研究担当者 |
丸山幸夫(筑波大学)
吉田充
高橋仁(秋田県総合食品研究所)
大坪研一
堀金明美
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発行年度 |
2006 |
要約 |
米の調理加工過程における吸水や粒内水分分布は、炊飯後、加工後の米の品質を左右する大きな要因である。MRIにおける三次元グラジエントエコー法により、空間分解能65×65×130 μm3、で1画像の測定時間最短約3分で、米の吸水過程と吸水完了時の水分分布を測定し、品種や米粒の組織構造の違いによる差を明らかにできた。
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キーワード |
磁気共鳴イメージング、米粒、水分浸透、浸漬、水分分布
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背景・ねらい |
米の調理加工過程における吸水や粒内水分分布は、炊飯後、加工後の米の品質を左右する大きな要因である。そこで、磁気共鳴画像法(MRI)で米の吸水過程と吸水完了時の水分分布を測定し、炊飯用、酒造用等各用途別の米の吸水特性を画像化して調べる技術を確立する。
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成果の内容・特徴 |
- 米一粒をプラスチックシートで保持して外径5mmのNMR試料管に入れ、マイクロシリンジで水を注入して浸漬を開始した(図1)。サンプルを入れたNMR試料管を内径5mmの検出用コイルにセットし、マイクロMRI装置(DRX300WB, Bruker Biospin)を用い、三次元グラジエントエコー法によりMRIの測定を行った。1画像の測定時間は2分55秒から9分53秒とし、空間分解能65×65×130 μm3で、時間を追って吸水の様子を測定した。
- 炊飯用の品種コシヒカリの正常米(図2A)では、胚乳のデンプン貯蔵細胞の密度が疎な腹側(a)や胚芽が除去された部分の中心線付近(b)から吸水が始まり、その後ひび割れが生じ、これを通して水が米粒全体へ浸透し、45~60分で吸水が完了した。
- コシヒカリの腹白米(図2B)では、浸漬後すぐに腹側からの吸水が始まり、30分後にほぼ吸水が完了した。
- コシヒカリ精白米の吸水経路や吸水時間は、腹白、心白などの組織構造や胚芽の残留の程度などによって異なり、画一的ではなかったが、吸水完了時に中心線付近やヒビ割れ部分に水が多く分布することは共通していた(図2A,B)。
- 酒米として利用される品種山田錦(図2C)も腹側や胚芽除去部から吸水を開始したが、水はデンプン貯蔵細胞の密度が粗な心白部(c)に達すると心白部内に急速に拡散し、そこに貯水し、その後米粒の厚さ方向への水の浸透が見られた。
- 吸水経路や吸水完了時の水分分布は米粒の組織構造や胚乳の硬度分布を反映しており、MRIで吸水過程や吸水完了時の水分分布を観察することにより、米の品種ごとの吸水特性を知ることができる。
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成果の活用面・留意点 |
- 米粒の吸水特性に関する情報が得られ、それを加工目的に応じた品種の適性評価に用いることができ、品種の選別、育種の方向性決定に貢献する。
- 加工工程ごとの米粒中の水分分布の観察も可能であり、業務用米の新しい加工流通技術の開発に役立てられる。
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URL |
http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010015021 |
カテゴリ |
育種
加工
酒造好適米
品種
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