麹菌の高温誘導性遺伝子の発現制御領域を利用したタンパク質生産の制御

タイトル 麹菌の高温誘導性遺伝子の発現制御領域を利用したタンパク質生産の制御
担当機関 (独)食品総合研究所
研究課題名
研究期間 2001~2006
研究担当者 栗原洋子
山口加奈子
松下真由美
楠本憲一
柏木豊
鈴木聡
発行年度 2004
要約 麹菌の高温誘導性熱ショック蛋白質遺伝子(Aohsp30)を単離し、その発現制御領域 を用い、外来遺伝子を組込んだ組換えプラスミドを構築した。これを麹菌に形質転 換し、得られた形質転換菌を高温培養することによって、外来遺伝子を高発現させ、
温度による蛋白質生産の制御に成功した。
キーワード 麹菌、ゲノム、高温誘導、蛋白質生産制御
背景・ねらい 1.麹菌は、味噌、醤油、清酒などのわが国の伝統的発酵食品生産に不可欠であり、酵素生産源とし てタカジアスターゼなどの酵素生産にも用いられ、産業的に重要な微生物である。麹菌は、蛋白 質の分泌生産性が高いという特徴を持っているが、さらに生産性の高い品種の育種が望まれてい る。
2.酒造における製麹(せいきく)工程では、製麹後期に品温が 40 °Cほどにまで上昇する。アミラ ーゼ等の酵素生産は、品温の上昇により急激に高まることが経験的に知られている。そこで、高 温培養において大量に発現する遺伝子を利用すれば、麹菌の酵素生産のさらなる改善が期待される。
3.本研究では、麹菌を高温培養した時に、特異的かつ大量に発現する遺伝子を単離し、この遺伝子発現制御領域を利用することにより、外来遺伝子産物の大量発現系の構築を目的とした。
成果の内容・特徴 1.麹菌を高温培養(37 または 42 °C)した時に特異的に発現する遺伝子を cDNA サブトラクション 法で探索し、熱ショック蛋白質の一種の遺伝子を単離し、本遺伝子を Aohsp30 と命名した。
2.Aohsp30 は、液体培養において 30 °Cではほとんど転写されないが、培養温度を 30 °Cから 42 °Cに 高温シフトさせると、転写量が急激に高まる特徴を持っていた(図1)。
3.大腸菌のβ-グルクロニダーゼ遺伝子(GUS 遺伝子)を保持する麹菌用形質転換ベクターp NAG GUS 遺伝子の 5’上流に Aohsp30プロモーター領域を連結し、高温誘導プロモーターベクタ ー pNAGMPro を構築した。pNAGMPro を用いて麹菌を形質転換し、組換え麹菌を取得した(図 2)。
4.得られた組換え麹菌を 30 °Cにて液体培養し、菌体を十分生育させた後、培養温度を 42 °Cに上昇 し、高温誘導を行うことにより、β-グルクロニダーゼ酵素活性を、30 °Cに比較して、50倍以 上に高発現させることに成功した(図3)。
成果の活用面・留意点 1.本高温誘導性遺伝子及び組換え麹菌は、酵素等の蛋白質生産の高度化のために利用することがで きる。
2.pNAGMPro ベクターにおいて、GUS 遺伝子の5’側のすぐ上流にマルチクローニングサイトを 導入すれば、クローニングに際して GUS 活性による挿入失活法を利用できるようになる。 3.高温培養において高発現する麹菌遺伝子およびその発現状況は、高温条件での麹菌の生育状態、
発酵状態を調査するための参考として活用できる知見である。 4.組換え DNA 技術を用いるため、本組換え麹菌は食品への直接利用には適さない。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010014986
カテゴリ アスター 育種 きく 品種

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