ゼジロウンカの翅型発現性の遺伝的背景

タイトル ゼジロウンカの翅型発現性の遺伝的背景
担当機関 北陸農業試験場
研究課題名
研究期間 1994~1997
研究担当者
発行年度 1994
要約  セジロウンカの翅型は,長翅,短翅という不連続な表現型を示すにもかかわらず,ポリジーン支配による量的遺伝形質である。幼虫密度のような環境刺激に対する量的形質の閾値反応によって,雌成虫が長翅型または短翅型になる。
背景・ねらい  長距離移動性イネ害虫のセジロウンカには雌のみに長翅型と短翅型があり,幼虫密度やイネの生育ステージの変化に反応して翅型を切り替える。近年,本種の飛来数とその後の発生量とが必ずしも比例しない事例がみられている。この理由として,飛来後の増殖率が,環境要因の変動のみならず飛来虫の翅型発現性の遺伝的特性によって左右されることが考えられている。しかし本種の翅多発現性の遺伝的背景はこれまで不明である。そこで翅型選抜および選抜系統間の交雑を行い,翅型発現性の遺伝様式を明らかにした。
成果の内容・特徴
  1.  翅型選抜は,短翅型が出現しやすい低密度条件での長翅選抜,長翅型が出現しやすい高密度条件での短翅選抜が最も有効であり,12世代の選抜により短翅雌率が両方向に大きく変化した(図1)。
  2.  選抜10世代目の長翅選抜系統(M1)と短翅選抜系統(B16)を両親としたF1,F2およびF1との戻し交雑系統を5段階の幼虫密度で飼育し,短翅雌率を調査した。F1世代の密度に対する翅型反応は,低密度では短翅選抜系統に近く,高密度では長翅選抜系統に近く,中程度の密度では両親の中間の値を示した(図2)。
  3.  本種の翅型は,表現型としては長翅,短翅の不連続な形質であるにもかかわらず,その遺伝様式は1遺伝子座2対立遺伝子支配ではなく,ポリジーン支配の量的形質であり,密度のような環境刺激に対する量的形質の閾値反応によって翅型が発現される(表1)。
  4.  実現遺伝率は長翅選抜で0.256,短翅選抜で0.149であった。Mather&Jinks(1982)の方法による最小遺伝子座数の推定値は3.4であり,ポリジーン支配とはいえ,多数の微働遺伝子ではなく,数個の遺伝子座における主要な対立遺伝子が関与していると思われる。
成果の活用面・留意点  翅型発現性の遺伝的変異性を考慮した本種の発生量予測技術の確立のための基礎資料として活用される。翅型発現性のような形質は,同じ遺伝子型でも密度の変化に反応してきわめて可塑的な表現型を発現するため,このような形質の遺伝解析を行う際には,単一ではなく多様な密度条件を考慮する必要がある。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010014102
カテゴリ 害虫

この記事は