稲WCSを基軸とする耕畜連携システム構築の便益と費用

タイトル 稲WCSを基軸とする耕畜連携システム構築の便益と費用
担当機関 大阪経済大学
研究課題名
研究期間 2005~2007
研究担当者 藤本鄕(大阪経済大学)
恒川磯雄(近中四農研)
発行年度 2005
要約 稲WCSを基軸とする耕畜連携システムの構築により生じる、飼料自給率向上、畜産糞尿循環利用、水田保全に関わる便益と、稲WCSの生産や糞尿の水田還元に関わる費用を比較すれば、便益/費用比は、肉牛肥育の場合2.3、搾乳の場合2.4となる。
キーワード 政府の介入、飼料自給、糞尿循環利用、水田保全、プレミア価格、便益/費用
背景・ねらい 稲WCS(Whole Crop Silage)とは、稲わらとは異なり、稲の子実と茎葉を同時に収穫し、サイレージとして調製される粗飼料である。稲WCSは、現物のまま、あるいはTMR(Total Mixed Ration)に配合され、牛に給与される。稲WCSを基軸とする耕畜連携システムの構築は、一方では、食料自給や農業の多面的機能に関わる便益をもたらすが、他方では、飼料用稲の生産や糞尿の水田還元に関わる費用が生じる。そこで、政府は、補助金により、飼料用稲の作付面積を拡大してきた。このような政府の介入の是非を検討するため、2003年基準で、この便益と費用を比較する。
成果の内容・特徴
  1. 鳥取県東部地域の耕畜連携システムを事例とする(図1)。このシステムの特徴は、耕畜の要となるコントラクターの存在である。コントラクターは、一方では牛糞堆肥の運搬・散布、他方では稲WCSの収穫・調製・運搬を担う。以下、このシステムを耕畜連携モデルとする。連携モデルでは、地域内産飼料は稲WCSのみとし、稲WCSの生産水田に牛糞堆肥(5t/10a/年)を還元する。他方、非連携モデルでは、畜産と耕種やコントラクターとの連関はなく、稲WCSはもちろん、地域内産飼料は給与しないとする。非連携モデルでは稲WCSを給与しないので、耕畜連携により、稲WCS生産費と輸入飼料購入費の差額分の費用が生じる。また、非連携モデルでは牛糞堆肥を水田還元しないので、耕畜連携により、堆肥の運搬・散布費用が生じる(両モデルとも牛糞の堆肥化費用は内部化される。連携モデルの堆肥販売価格はゼロ。)。
  2. 飼料国内自給、窒素ベース糞尿循環利用、休耕田(耕作放棄田含む)をモデル間で比較した(表1)。また、これらの変化に伴い生じる畜産物のプレミア価格を選択実験型コンジョイント分析により計測した(牛肉・牛乳を、飼料国内自給率、糞尿循環利用率、休耕田面積、価格、の4属性を持つ仮想商品として表現し、消費者に、属性の異なる仮想商品から選択を求める実験)。肉牛肥育の場合、耕畜連携により、飼料国内自給率が3.5%向上する。また、牛肉の場合、飼料国内自給率1%向上に対して、消費者が支払う意志のあるプレミア価格は0.56%である。両者を掛算すれば、耕畜連携により、1.97%のプレミア価格が生じる。
  3. このプレミア価格に牛1頭当たり牛肉の需要額PQ(牛1頭当たり生肉産出額の購入者価格評価)を掛算すれば、耕畜連携による飼料自給率向上の牛1頭当たり便益17千円を得る(表1)。同様に、糞尿循環利用、休耕田減少の便益を計測し、それらを合計すれば、耕畜連携の便益は、肥育牛1頭当たり42千円となる。同様に、搾乳牛通年換算1頭当たり63千円となる。
  4. 耕畜連携の費用は、牛1頭が誘発する費用(=システム外中間投入+資本減耗+労働費)をモデル間で比較すれば、肥育牛1頭当たり18千円(=388-370)、搾乳牛通年換算1頭当たり26千円となる(表2)。耕畜連携の1頭当たり補助金も同様に求めることができる(表2)。
  5. 便益/費用比は、肉牛肥育の場合2.3、搾乳の場合2.4となる。すなわち、耕畜連携システム構築への政府の介入は、社会をより望ましい状態に導くと言える(表3)。
成果の活用面・留意点
  1. 便益/補助金比も1を上回り(表3)、補助金が全国の平均的な耕畜連携システム構築費用を補償しているならば、以上の結論は普遍性を持つ。牛1頭当たり稲WCS給与量が変化しても、本モデルでは便益/費用比や便益/補助金比に影響がなく、結論は稲WCS給与量にも影響されない。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010010421
カテゴリ コントラクター 飼料用作物 水田 肉牛 乳牛

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