土壌線虫の微小生息圏を模倣・観察できる微細加工基板

タイトル 土壌線虫の微小生息圏を模倣・観察できる微細加工基板
担当機関 (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 中央農業総合研究センター
研究課題名
研究期間 2003~2005
研究担当者 伊藤賢治
乙部和紀
吉田睦浩
五十嵐武士(株式会社イガデン)
水久保隆之
発行年度 2005
要約 土壌の微細空間構造を模した細孔ネットワークを有する透明樹脂製基板をもとに、細孔構造の多様な加工あるいは細孔内壁面の化学的修飾を可能にすることで、線虫等微小動物の行動を、化学物質への応答を加味しながら観察できる土壌モデルを提供する。
キーワード 微細加工基板、微小生態系、細孔ネットワーク、線虫
背景・ねらい 土壌団粒内部は、孔径30~90umの細孔ネットワーク空間であると言われており、土壌構造と線虫の生息適性との関連が指摘されている。しかし、土壌内における生態を直接観察することは困難であることから、直接観察可能な土壌モデルを利用した生息環境の模倣・推定手法が有効である。これまでに、透明なシリコーンゴム製の基板上に微細加工技術を用いて構築した土壌モデルを利用して、微細空間内での生態を直接観察する装置を試作したが、行動と空間構造との関連を観察するにとどまった(平成15年度共通基盤研究成果情報)。そこで本成果では、空間構造と空間を形成する壁面の化学的特性を制御することで、微細空間内での化学物質に対する応答を加味した線虫の生態観察を実現する。

成果の内容・特徴 1.
微細空間に生息する生物は微細構造に特有の環境特性(重力よりも液体の表面張力の影響が大きい、化学反応がおこりやすい)の影響を受ける。今回の装置(図1)では、空間の幅・長さ・分布形態を変化させた多様な構造パターンを一枚の基板上に実現することで、化学的特性が同じで構造が異なる空間内部における線虫の行動パターンを同時に観察・記録できる(図2)。
2.
微細空間内の化学物質は微量でも生命活動に影響を及ぼすため、空間内の化学的特性は構造と共に重要な要素である。この影響を加味した観察を可能とするために、本装置ではシランカップリング剤処理により官能基(アミノ基、チオール基など)で微細空間壁面を修飾した基板を用いる。これにより、ケイ酸塩類などが線虫行動に及ぼす影響(化学物質に対する忌避・誘引行動など)の吟味ができる。
3.
生物農薬として用いられる昆虫病原性線虫Steinernema carpocapsaeを対象とした実験では、線虫が行動しにくいとされる疎水的環境下でも基板全体を動き回る様子が観察される(図3)。それに対して、有機ケイ素化合物が有するシラノール基で修飾された基板上ではほとんど移動せず、シラノール基への忌避と見られる行動が観察される。

成果の活用面・留意点 1.
モデル系内での行動を環境制御下で詳細に観察可能であることから、植物寄生線虫の生息を左右する環境(土壌)要因の推定・解析や忌避物質の同定などに活用できる。
2.
微細空間に収まるサイズの微小動物(プロトゾアなど)の生態観察にも利用できる。
3.
アクリル樹脂製の格納容器を開発することで、装置の低コスト化・耐久性向上を実現し、株式会社イガデンより販売されている(平成17年4月~)。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010008231
カテゴリ 加工 環境制御 低コスト 農薬

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