タイトル | 乳酸菌由来の溶菌酵素の大量発現と精製 |
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担当機関 | 富山食研 |
研究課題名 | |
研究期間 | 1999~2003 |
研究担当者 |
横井健二 |
発行年度 | 2003 |
要約 | 乳酸菌ゲノムライブラリからクローニングした溶菌酵素遺伝子を、大腸菌内で大量発現できる。この溶菌酵素は、金属キレートアフィニティークロマトグラフィーとゲル濾過法により精製でき、様々なグラム陽性細菌に溶菌活性を示す。 |
キーワード | 乳酸菌、発酵食品、溶菌酵素、大量発現、金属キレートアフィニティークロマトグラフ |
背景・ねらい | 漬け物、味噌などの発酵食品は、微生物の持つ様々な酵素を利用して風味を醸成している。微生物の菌体内には、より多くの酵素が存在しているが、現状の発酵過程では菌体内の酵素はあまり利用されていない。発酵中に、微生物の溶菌を引き起こすことなどにより菌体内酵素を菌体外に放出出来れば、原料がより多くの酵素により分解・熟成され、新たな風味を作れる可能性がある。そこで本研究では、近年その機能面から注目されている乳酸菌について、溶菌酵素を用いて菌体内酵素を放出させることを目標に、溶菌酵素のクローニングと精製を試みた。 |
成果の内容・特徴 | 1. 溶菌酵素の大量発現 大腸菌発現ベクター(pUC118)に、Lactobacillus gasseri TFR-1のゲノムからクローニングした、溶菌酵素遺伝子(lysTF)を組み込んだプラスミド(pLys TF)を用いることにより、大腸菌内で溶菌酵素(LysTF)を大量発現できる(図1)。 2. 溶菌酵素の精製 6×Hisタグを含む発現ベクター(pET15b)に、lys TFを挿入することにより、タグ融合溶菌酵素(His-Lys TF)を発現するプラスミド(pHLysTF) を構築した。これを大腸菌(Novablue DE3)内に導入し、25℃で発現誘導して菌体を集め、超音波破砕して遠心分離すると、His-Lys TFの大部分が可溶性状態として上清に得られる。この上清を金属キレートアフィニティークロマトグラフ(HiTrap Chelating HP)およびゲル濾過に供することにより、精製His-Lys TFを得ることが出来る(図2)。 3. 溶菌酵素の応用範囲 精製His-Lys TFは、ザイモグラム*において多くのグラム陽性細菌に対し溶菌活性を示す(表1)。 * ザイモグラム:SDS-PAGEにおいて、ゲルに基質(菌体)を懸濁して泳動を行い、泳動後復原液に浸すことにより、活性を検出する方法。菌 体が溶けた部分が、白く抜けて見える。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 溶菌による内在酵素の利用以外にも、抗菌性についても検討する必要がある。 2. 溶菌酵素の生菌に対する作用は未検討である。 |
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