アフリカイネ、アジアイネおよび種間雑種の短期冠水耐性

タイトル アフリカイネ、アジアイネおよび種間雑種の短期冠水耐性
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究課題名
研究期間 2006~2010
研究担当者 坂上潤一
発行年度 2007
要約 ギニアで広範囲なイネ遺伝資源の短期冠水反応性を評価した。冠水の耐性向上には、冠水中の草丈伸長抑制、地上部乾物増加に加え、退水後の倒伏抑制が重要である。アフリカイネの大部分は、冠水感受性であったが、Saligbeliは他のアフリカイネや冠水耐性(Sub-1)品種とは異なる冠水反応性を示した。
背景・ねらい
 西アフリカに位置するギニアでは、海岸沿岸地域や河川流域に広がる天水田において、豪雨による急激な水位上昇に伴う数日から数週間の短期的な冠水がしばしば発生する。この短期冠水は、特に播種後のイネの生育に大きな影響を及ぼしている。ここで言う冠水とは、植物体の一部あるいは全部が水に被ることを指し示している。イネの短期冠水耐性とは、約10日間の完全冠水に対して十分な生存を維持できる性質を言う。通常に生育するイネは通導組織によって地上部から根への酸素供給をおこなうが、植物体が完全冠水すると酸素供給に障害が生じ、冠水中の植物体の酸素代謝が制限される。したがって、短期冠水常襲地域においては、完全冠水に対して耐性機能を持ったイネ品種の評価と導入が重要である。そこで、本研究は、対象地域における洪水等過剰水ストレスに対するイネの冠水耐性の向上を目的に、ギニアにおいて2年間にわたりポット(コンクリートタンク)および圃場において、最も冠水の被害が大きい育苗期のイネの短期冠水耐性を評価し、その耐性向上に密接に関連する重要形質の特定を行う。
成果の内容・特徴
  1. 播種後15日目のイネの幼植物体を7日間完全冠水すると、ポットおよび圃場試験ともに、冠水中の草丈の伸長量と冠水解除後14日間の地上部乾物重増加比(冠水区/非冠水区)の間には、有意な負の相関関係が示される(図1)。
  2. IRRI(国際稲研究所)が同定した冠水耐性遺伝子Sub-1を有する品種(以降、冠水耐性品種と呼ぶ)については、冠水中の地上部伸長量は極めて小さく、冠水解除後の地上部乾物重増加比(冠水区/非冠水区)は大きい(図1、2)。
  3. 大部分のアフリカイネ(Oryza glaberrima Steud.)については、冠水中の地上部伸長量は大きく、冠水解除後の地上部乾物重増加比(冠水区/非冠水区)は小さい (図1、2)。一方、アフリカイネのSaligbeliは、冠水中の地上部伸長量および冠水解除後の地上部乾物重増加比(冠水区/非冠水区)ともに大きい。
  4. イネの短期冠水耐性向上には、完全冠水中の低酸素の嫌気的条件から、退水後の酸素代謝が可能な好気的条件へ変化する環境適応力が必要である。短期冠水に対するイネの反応性の指標(変数)は、①地上部伸長量、②倒伏程度、③地上部乾物増加量である(図3)。
  5. 第1主成分(I)と第2主成分(II)で、これら3つ指標(変数)が持っている情報の約74%の説明が可能で、第1主成分は総合的な短期冠水耐性を示している(図3)。
  6. ギニアにおけるイネの育苗期の短期冠水に対して、冠水耐性品種は高い耐性を示し、Saligbeliを除くアフリカイネは感受性を示す (図4)。
成果の活用面・留意点
  1. 冠水耐性品種やSaligbeliについて、物質生産能力等の生理的特徴について明らかにすることは、水ストレス耐性機能の詳細な解明につながる。
  2. 特定した指標を短期冠水耐性の簡易検定法に適用できる。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010004958
カテゴリ 育苗 遺伝資源 簡易検定法 水田 播種 品種

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