めん物性に関与するグルテニン蛋白質遺伝子Glu-D1fアジアにおける地理的分布と日本への小麦伝播経路

タイトル めん物性に関与するグルテニン蛋白質遺伝子Glu-D1fアジアにおける地理的分布と日本への小麦伝播経路
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究課題名
研究期間 2002~2004
研究担当者 中村 洋
発行年度 2004
要約 〔良いめん物性に関与するグルテニン蛋白質遺伝子Glu-D1fのアジア地域における地理的分布から、日本への伝播経路は、
背景・ねらい 小麦(Triticum
aestivumL.)の良いめん物性(軟質で生地物性が弱い)に関与するグルテニン蛋白質遺伝子Glu-D1fは日本品種に高頻度で存在するが、パン文化圏である欧米の小麦品種にはほとんど存在しない(Morgunov et al. 1993, J. Genet. Breed., Nakamura et al. 2001, Cereal Chemistry )。そこで、めん文化圏の小麦品質特性を明らかにすることを目的に、軟質めん用(うどん)のグルテニン蛋白質遺伝子Glu-D1fのアジアにおける地理的分布を調査した。また、小麦はシルクロードを経由して日本へ伝播したがそのルートはいくつかあるといわれており、中でもアフガニスタンから中国の新疆ウイグル自治区を経由(シルクロードの北ルート)して小麦が伝播したとする説が考古学的に有力とみられているが、Glu-D1fの地理的分布から日本への伝播経路についても併せて検討を行った。
成果の内容・特徴
  1. アジアの小麦(Triticum
    aestivumL.)1179品種についてグルテニン蛋白質遺伝子Glu-D1fの有無をSDS-ゲル電気泳動により分析した結果、日本以外では、アフガニスタン、中国および朝鮮半島の小麦品種のみに存在が認められ、その頻度は各々9.5%、1.4%および6.9%であった。低頻度ではあるが、アジアにおけるGlu-D1fの存在を認めた(表1)。さらに、中国の各地域内では、新疆ウイグル自治区で2点、淅江省で1点、南京で1点、北京で1点の各品種にこの遺伝子の存在を認めた(図1)。
  2. アジアにおけるGlu-D1fの地理的分布から、アフガニスタンから中国の新疆ウイグル自治区を経由して(シルクロードの北ルート)南京・淅江省に達し、日本へ伝播したルートと、さらに別ルートとして、同じシルクロードの北ルートを経由してから北京に達し、さらにそこから朝鮮半島を経由して最終的に日本へ伝播した朝鮮半島経由ルートの存在が示唆された(図1)。
  3. 中国から日本への直接伝播ルートは、日本へのめんロード(中国から日本へめんが伝わったルート、
    石毛直道著:文化麺類学ことはじめ、フーディアムコミュニケーション社)と一致しており、また、朝
    鮮半島経由ルートも、土器などの伝播により考古学的に指摘されていたルートと一致した(藤井純夫 著:ムギとヒツジの考古学、同成社)。
成果の活用面・留意点
  1. アジア各国の小麦品種におけるグルテニンGlu-D1f遺伝子の有無および地理的分布から、パン文化圏とめん文化圏(アジア)における品質の違いを説明でき、小麦育種・品質研究のための重要な研究情報としての活用ができる。
  2. めん適性に優れる小麦遺伝資源の母材探索地域の選定時、伝播経路を参考にして中国・新疆地域など良いめん物性に関与するGlu-D1fの存在する地域に絞込むことにより、効率的にグルテニン遺伝子や良い品質特性の探索・導入を図れる。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010004896
カテゴリ 育種 遺伝資源 小麦 品種

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