中国太湖地域の農業集水域からの地表水による窒素の流出

タイトル 中国太湖地域の農業集水域からの地表水による窒素の流出
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究課題名
研究期間 1997~2003
研究担当者 八木一行(農環研)
貽倹(南京大学)
発行年度 2003
要約 江蘇省宜興市梅林集水域からのは、域内施肥窒素量の8.5 %にあたる y-17
背景・ねらい 太湖周辺地域は、中国で最も経済発展を遂げた地域のひとつであるが、水系の富栄養化が深刻な問題となっている。これに対して、中国政府は主要な汚染源とみられた多数の企業を閉鎖し、また集水域内での有リン洗剤の販売と使用を禁止するなどして水系の浄化に努めてきたが、近年太湖の水質に有意な改善は見られておらず、過剰施肥による農地からの養分流出の増加がこの水質汚染の主因のひとつであると考えられるに至っている。しかしながら、この地域における養分動態に関する情報は限られたものであり、その多くも小規模なプロット試験の結果に基づいたものでしかない。そこで、江蘇省宜興市梅林集水域(31゜20’
N, 119゜51’ E、1.22 km2、図1 )を対象として、地域の窒素動態を調査し、その実態を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 対象地は、2 本の水路に隣接した谷底部に水田、その上部傾斜地に畑、果樹園、竹林、森林が広がる太湖西岸地域の典型的な農業集水域である(図1)。年降水量は約1280
    mm(その70%は3 ~ 8 月)である。
  2. 農家聞取り調査により、集水域内の各栽培作物延べ作付面積および窒素施肥量を推定した結果(表1)、域内施肥窒素量は作付面積あたり391
    kg ha-1 y-1(木本を含む)、集水域全面積あたり238 kg ha-1
    y-1である。
  3. 水路下流端に四角堰(図1 )を設け、集水域から地表流出する窒素濃度をモニタリングした結果、水稲・アブラナ等の主要作物の施肥時期に対応して急激な濃度上昇が認められる(図2
    )。水稲基肥施肥期にのみアンモニア態窒素濃度が顕著に上昇していることから、同時期の田面水表面流去の影響が示唆される。
  4. 一方、水稲生育の旺盛な7 ~ 9 月には、全窒素濃度はほぼ2 mg l-1 以下に抑えられる(図2)。これは、夏季における作物および水生植物による窒素吸収量の増加や、水路周辺に広がる水田の還元状態の進行による脱窒の活発化等によるものと考えられる。
  5. 対象集水域からの地表水による流出窒素量は20.3 kg ha-1 y-1 と推計され、域内施肥窒素量の8.5
    %にあたる。これは、太湖集水域全域から太湖に対して同強度の窒素負荷がありその全量が太湖に集積すると仮定した場合、太湖の全湖水窒素濃度を約16
    mg l-1 y-1 増加させる負荷量に相当する。
  6. プラスチック膜により周囲と隔離した水田圃場(0.0756 ha)を用い、地表流出入水量とその水質を調査した結果、排水による窒素流出量は8.34
    kg ha-1 y -1 と推定され、域内平均の41%にあたる。
  7. 傾斜地の代表的な土地利用形態である野菜畑(ヘチマ-豆-大根)、畑地(トウモロコシ-アブラナ)、栗林、竹林からそれぞれ代表的な2
    地点(傾斜10 ~ 15゜)を選択し、枠試験圃場(傾斜に沿って約10m ×幅約5 m)を設定して、強雨後に表面流去する水量、懸濁物量およびそれらに含まれる窒素量を調査した結果、竹林・栗林に対して、畑地・野菜畑では表面流去窒素量および土壌侵食量が大きい(図3)。
成果の活用面・留意点
  1. 本結果は、太湖地域水系の富栄養化を議論するためのひとつの重要な事例となる。
  2. 水稲基肥施肥直後の田面水位を低く抑えることによって6 月期の窒素流出が抑制される可能性がある。
  3. 中国における富栄養化の問題を議論する際には、地表水移動のみならず大気に放出されるアンモニア等の含窒素ガスの影響も考慮する必要がある。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010004861
カテゴリ あぶらな 傾斜地 水田 水稲 施肥 とうもろこし へちま モニタリング

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