鳥類の多様性は海外における土地利用の変化も反映している

タイトル 鳥類の多様性は海外における土地利用の変化も反映している
担当機関 (独)森林総合研究所
研究課題名
研究期間
研究担当者 岡部 貴美子
山浦 悠一
滝 久智
小泉 透
光田 靖
発行年度 2009
要約 鳥の多様性は日本全体の森林の変化だけでなく、東南アジアにおける変化の影響も受けていることがわかりました。
背景・ねらい 人類はこれまで地球上の陸地の50%を利用してきたと言われます。農地化や宅地化といった土地利用の変化は、生物多様性に大きな影響を及ぼすことが様々な地域で明らかにされてきました。しかしこれまで行われたほとんどの研究は、狭い範囲でおこる変化に注目しています。人間による土地利用面積が拡大した現在では、生物多様性が受ける影響は、より広い範囲、例えば国土全域や地球全体にまで波及するのかが大きな関心を集めてきました。
そこで本研究では、森林の変化が生物多様性に及ぼす影響を日本~アジアという大きなスケールで明らかにすることを目的としました。
成果の内容・特徴

変化を調べることが可能な生き物は何か

近年、日本を始め世界各国で生物多様性に関する調査(=モニタリング)が行われています。日本全土というスケールで森林の生物多様性の変化を調べることが可能なモニタリングデータを探したところ、環境省の自然環境保全基礎調査が適当であることがわかりました。そこで1970年代と90年代に行われた鳥の分布調査結果を利用することにしました。

森林はどのように変化したのか

日本では1970年代以降皆伐面積の減少に伴い、林齢が10年に満たない幼齢期の森林(以下、幼齢林)が減少しています(図1)。一方で、森林全体の面積がほとんど変化していないため、幼齢期以降の森林面積は増加しています(図2、3)。したがって幼齢林に生息する鳥の種は減少し、幼齢期以降の森林に生息する種は増加していると予測されます。また日本で繁殖する鳥類には、冬になると越冬のために南方へ渡りを行なう種(夏鳥)と、渡りを行なわない種(留鳥と漂鳥)がいます。日本の夏鳥の多くが越冬する東南アジアの森林は、農地開発などによって大きく減少しており、FAOの統計によると1990~2000年にかけて11%(2790万ha)が消失しています。これはほぼ日本全体の森林面積に相当します。 このような日本の森林の変化と東南アジアの森林の減少から、70年代と90年代を比較すると、幼齢期以降の森林に生息する種のうち夏鳥の分布域は減少する一方で、日本に留まる留鳥と漂鳥の分布域は増加していると予測することができます。

鳥の多様性はどう変化したのか

幼齢林に生息する種は夏鳥も留鳥・漂鳥も分布域が縮小していました。また幼齢期以降の森林に生息する種では、夏鳥の分布域は縮小していましたが、留鳥・漂鳥では分布域が拡大していました(図4)。したがって予測は正しかったといえます。このことは、夏鳥の繁殖地である日本だけの保全活動では渡り鳥を効果的に保全することができないことを示しています。土地利用の変化が生物多様性に及ぼす影響は国土全域にまで及び、さらに国境を越えて波及すると考えられることから、生物多様性の保全には国際協力が不可欠といえます。

2010年には日本で生物多様性条約締約国会議(COP10)*が開催され、2010年目標*達成が評価されます。さらに新たな目標が設定され、条約締約国が協力して目標達成に努力することになります。本研究の成果は2010年目標達成の評価や新目標達成のために活用することができます。

*生物多様性条約締約国会議:1993年に発効した生物多様性条約を締約した国々が2年に1回開催する会議(通称CBD/COP)。次回の締約国会議COP10は日本が議長国となり、2010年に名古屋市で開催される。
*2010年目標:生物多様性条約で2010年までに生物多様性の損失速度を顕著に減少させるという目標。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010002890
カテゴリ 繁殖性改善 モニタリング

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