小笠原諸島の外来生物管理

タイトル 小笠原諸島の外来生物管理
担当機関 (独)森林総合研究所
研究課題名
研究期間
研究担当者 大河内 勇
発行年度 2008
要約 固有種を数多く産する海洋島の小笠原諸島は、外来生物の影響で独自の生態系が被害を受けています。外来生物の生態系への影響を解明し、外来生物制御と固有種保全に関する管理方法を提案しました。
背景・ねらい 小笠原諸島は独自の生態系を有し、世界自然遺産候補として登録に向けた準備がされています。しかし、一方では、様々な外来生物が小笠原に侵入して、島の固有生物を絶滅に追いやり、生態系を破壊しつつあります。生態系を守り、世界遺産候補としてふさわしくなるためには、外来生物の制御が欠かせませんが、無分別な外来生物駆除はかえって別の外来生物を増やす可能性があるなど、その対策は生態系の理解に基づいて行う必要があります。
本研究では、生態系における生物間相互作用を調べ、適切な外来生物制御、固有種保護に関する戦略を作成し、小笠原の世界自然遺産指定に向けた対策事業を支援するとともに、同じ問題に悩む太平洋の島々に情報を提供することもねらいました。
成果の内容・特徴

グリーンアノールの影響と対策

グリーンアノールは北米原産の樹上性のトカゲで、小笠原の父島・母島に侵入し、オガサワラシジミやトンボ類など多くの固有昆虫を絶滅寸前に追いやりました。ここでは、研究した外来生物のうち、主にグリーンアノールを中心に説明します。
私たちの研究で、グリーンアノールは固有のハナバチ類を滅ぼし、替わりに外来生物のセイヨウミツバチだけが主要な花粉媒介者となった島では、受粉が上手くいかない在来の植物(固有種も含む)があることがわかりました。外来植物の方が花粉媒介では有利になるので、長期的には小笠原の植物相、生態系が外来植物の多い状態に変化してしまうでしょう。セイヨウミツバチは少ないとはいえ、在来の植物の花粉媒介を行っているので、すぐに駆除すべきではありません。今は、外来の植物を駆除し、競争を軽減して在来の植物を増やすことが必要です。
アノールは父島、母島以外には侵入していないため、トンボ類などは周辺の小さな離島に生き残りました。しかし、それらの離島は小さいため、繁殖できる自然の池が少なく、干ばつなどの気候の変動で絶滅する恐れがありました。そこで、固有のトンボ類の繁殖場所の確保のために人工池を設置しました。2004年には恐れていた干ばつが発生し、自然の池の固有のトンボの個体群はほぼ全滅に近い状態でしたが、設置した人工池では、小笠原固有のトンボ類が生き残り、絶滅を回避することができました。
グリーンアノールの推定個体数は600万頭と非常に多く、簡単には排除できません。しかし、アノールの個体群動態モデルを作成して計算すると、フェンスなどで移動を断ち切れば、大量のトラップ設置などの集中的な捕獲で地域的根絶が可能なことがわかりました。現在、この成果に基づき、オガサワラシジミの最後の生息地周辺のグリーンアノールの密度を低減させることや、固有トンボ類の生息する離島などへの拡散を防ぐための港周辺での根絶作戦が行われています。
一方で、グリーンアノール対策はまだ完全でないので、自然のオガサワラシジミは守れない可能性があります。万一の事態に備え、オガサワラシジミを飼育下で増やす研究も行っています。オガサワラシジミやトンボ類は天然記念物に指定されており、文部科学省の許可を得て研究しています。

総合戦略

どの外来生物も、在来の生物や、他の外来生物と様々な関係があります。外来生物の完全な根絶が難しい場合には、グリーンアノールの場合のように、これら生物間の関係を探り、その一つ一つに対して対策を立てる、総合的な保全対策が必要です。私たちはアノール以外の主要な外来種についても研究し、その成果を、世界自然遺産候補地選定科学委員会に提言し、総合的な管理戦略の策定を支援するとともに、環境省の自然再生事業、林野庁の森林生態系保護地域の設定、東京都の兄島のノヤギ対策事業等へも協力しています。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010002832
カテゴリ 植物相 受粉 繁殖性改善 ミツバチ 山羊

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