マツタケの個体識別が可能に-人工栽培技術の開発へ第一歩-

タイトル マツタケの個体識別が可能に-人工栽培技術の開発へ第一歩-
担当機関 (独)森林総合研究所
研究課題名
研究期間
研究担当者 村田 仁
発行年度 2004
要約 マツタケの個体識別法を開発し、マツタケが遺伝的に多様な生物種であることを証明しました。マツタケの個体識別ができることにより、未だ出来ていない人工栽培法の開発に適した菌株の選抜や栽培化試験の事後評価が可能になります。
背景・ねらい マツタケは、樹木の根圏に作るマツタケ菌糸の集落「シロ」*の成長過程で子実体をつくります(図1)。マツタケの人工栽培法は未だ開発できていません。その要因の一つとして、これまでマツタケの個体識別法が確立されていなかったため、個々のマツタケ菌株の特性が把握できなかった点があげられます。農作物では、優良系統の選抜育種を経て、栽培可能な品種が作出されます。個体識別ができると、今までひとくくりにされていたマツタケの中から人工栽培に適した菌株を選抜することが可能になります。本研究では、生物の染色体進化に深く関係するレトロエレメント*をDNAマーカーに用いたマツタケの個体識別法を開発しました。
成果の内容・特徴

DNAマーカー選び

マツタケの染色体に数多く存在するレトロエレメント(marY1)のDNAマーカーとしての有用性に着目しました。核を有する生物は、非常に多くのレトロエレメントのコピーを染色体にもちます。同一生物種でも、個体間で生育環境の違いなどから染色体に異なる進化がおこるため、レトロエレメントの配置特性が異なります。つまり、レトロエレメントは個体識別に有効なDNAマーカーです。

個体識別が可能に

今回、marY1の染色体上での配置特性を調べることで、マツタケの個体識別が可能になりました(図2)。この手法を用いると、2つの異なる個体を誤って同一と認識する確率は、理論的にほとんど無いと考えられます。たとえば、岩手県から山口県に至る日本産マツタケを調べると様々な個体群が存在し、単一のシロでも複数の個体群が混在していることが明らかになりました。また、同様の傾向は、韓国、北朝鮮、中国、ブータン、さらにはモロッコやメキシコなど海外からの
マツタケでも見られました。この結果、マツタケが遺伝的に多様な生物種であることが明らかになりました。
マツタケの個体識別ができることによって、人工栽培法の開発に適した菌株の選抜や栽培化試験の事後評価が可能になります。そして、菌株ごとに適したマツタケの生育環境や共生関係にある樹木との相性などを明らかにすることができるようになります。つまり、マツタケの多様性を踏まえた新たな人工栽培技術の開発の第一歩が開けたのです。

詳しくは、Murata, H., Babasaki, K., andYamada, A. (2004) Mycorrhiza (online version) 16 をご覧下さい。

*シロ;マツタケの根圏集落。菌根と気中菌糸が根圏で発達して出来た塊のことです。
*レトロエレメント;染色体上のある位置におけるDNAがいったんRNAに転写され、RNAが逆転写酵素の働きで相補的DNAに写しかえられて染色体上の他の位置に再挿入される場合の、この転移するDNAの総称のことです。
*菌根;植物の根に菌類が侵入して形成される構造のことです。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010002766
カテゴリ 育種 くり 栽培技術 シカ DNAマーカー 品種

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