森林動態データベースの公開

タイトル 森林動態データベースの公開
担当機関 (独)森林総合研究所
研究課題名
研究期間
研究担当者 新山 馨
武生 雅明
河原崎 里子
発行年度 2003
要約 日本各地に設定した貴重な天然林試験地の毎木データ、稚樹データ、実生データなどをデータベース化し、公開した。
背景・ねらい 地球温暖化や生物多様性の減少など、地球環境問題の解決に果たす森林の役割が大いに期待されています。しかし、森林の炭素固定能力や生物多様性の維持に果たす役割を評価するには膨大な科学的データが必要です。そのためには各地にある研究機関の持つ情報を公開し、相互利用するのが効率的です。その手始めとして森林総合研究所の持つ基礎情報を広く利用してもらうために、科学技術振興機構の研究情報データベース化事業の支援を受け、森林動態データベースの開発を行いました。森林動態データベースは、森林総合研究所が大規模な天然林試験地で長期にわたって蓄積した、樹木の成長と生存のデータベースです。データはすべて研究者自身の手によって現地で正確に測定された貴重なものです。公開の目的は、森林データを必要とする研究者や教師、行政などに広く森林の基礎情報を提供することです。そのため、森林を構成する各樹木の成長や生死などのデータを標準化し、利用しやすいデータ構造を構築することが必要でした。
成果の内容・特徴

データベースの概要

このデータベース(FDDB)には、日本各地に残る貴重な天然林に設置した数ヘクタールの長期生態観察用試験地のデータを対象とし、北海道から九州、屋久島まで8試験地のデータを保存しました。データベースは様々な処理が可能なリレーショナルデータベースで、日本各地に設定した試験地の樹木の幹を単位とし、個体識別番号、幹の位置情報、樹種名、2年ないし4年ごとの周囲長、直径の計測値データなどで構成されます。幹は生活史段階によって成木、稚樹、実生、当年実生に分けました。これに付随した種子生産や落葉落枝量のデータを加えてあります。
森林帯ごとに設置した日本各地の試験地で、このようなデータセットを整備し、日本の天然林の構造と動態に関するデータベースを構築し、平成15年10月10日に公開しました(図1)。また英語版も作成したので、海外への情報発信もできます。

データベースの使い方

トップページには利用者のためのガイダンスとデータ利用許可のための申請方法、データベースを利用するための必須の試験地情報などが系統立てて記載されています(図2)。利用は簡単で、公開された試験地データを元に、樹種ごとの幹の分布や、幹の直径の頻度分布などが見られます。研究用に生データの利用を希望する場合はデータベース検索で必要なデータを確認した後、申請してください。各試験地ごとに申請と許可(パスワードの通知)が行われます。利用者はこのパスワードを使って、データをダウンロードできます。利用者インターフェースには簡単なグラフ作成機能や集計機能もあるので、学生ないし教育関係者にも十分利用してもらえると思います。また関連する環境データなども各試験地に直接問い合わせることで情報が得られます。
データベースはシステムを改良し、データをさらに追加することが重要です。本データベースは日本国内の森林を対象としてスタートしましたが、種名リストを追加することで海外試験地の追加も可能となります。将来の世代に本当の森林の姿を伝えるために、この森林動態データベースが役立つことを期待しています。

本研究は森林総合研究所と科学技術振興機構との共同研究「森林動態データベースの開発」により行いました。
カテゴリ 環境データ データベース