純一次生産力の全球分布の実態を見る

タイトル 純一次生産力の全球分布の実態を見る
担当機関 森林総合研究所
研究課題名
研究期間
研究担当者 粟屋 善雄
田中 邦宏
小谷 英司
発行年度 2000
要約 植生が吸収する日射量と成長量の関係に基づいて、人工衛星データと気象データから純一次生産力の全球分布をマッピングした。高緯度ほど年間の生産力は低いが、夏の中高緯度で月間の生産力が最大になることが明らかとなった。
背景・ねらい 地球温暖化の可能性が大気大循環モデルのシミュレーションで指摘されるだけでなく、全球の平均気温の上昇傾向が続いている。大気中の二酸化炭素は温暖化の原因物質とされ、その排出量の削減や、生態系における炭素の現存量や収支の解明が国際的に求められている。ところで、陸上生態系における炭素の収支は純生態系生産力と呼ばれ、植物の純一次生産力(NPP)から土壌呼吸量を引いた値で、炭素収支の推定にとって重要なパラメータである。このような背景から、炭素収支と密接に関連する純一次生産力を全球レベルで推定することを目的に研究を実施した。
成果の内容・特徴 光利用の観点からは、NPPは植物が吸収する光合成有効放射(PAR)の量に比例することが知られている。PARは日射量(SR)のおよそ半分に相当する。また、NOAA衛星のデータから計算される正規化植生指数(NDVI)は、植物によるPARの吸収割合に比例する。このため、NDVIと日射量の積は植物が吸収するPARに相当する。一方、自然植生のNPP観測データに基づいて作られた内嶋ら(1985)の気候学的NPP推定モデル(筑後モデル)は、気象データを用いて、ある地点でのNPPのポテンシャルを推定できる。気象官署での気象データと筑後モデルでNPPを推定し、NDVIと日射量の積との関係を検証した(図1)。その結果、両者は全球レベルで比例することが明らかになった。図1の回帰直線の傾きは、植生が光エネルギーを物質に変換する効率の平均的な値に相当する。

実際には、植生の成長は気温や水分によるストレスの影響を受けたり、生育ステージで変化する。このため、本研究では気温と土壌水分の効果を加味して、図1中の回帰式に基づいてNPPの全球分布を推定した(図2)。この推定には1998年のNDVIデータと米国の気象モデルで推定された気温、日射量、土壌含水率のデータを利用した。全球のNPPの推定値はIPCCが採用している年間60ギガトン(炭素重量)より4%ほど小さい値になった。図2では春(北半球4月)や秋(南半球4月)には著しく大きいNPPを示す地域はないが、夏(北半球7月、南半球1月)には中高緯度でNPPの大きい地域が生じた。これは生育期間の短い地域では、植物が短期間に成長を遂げることを意味している。年間のNPPは通年で安定して成長できる赤道付近で大きく、植生の生育が困難な乾燥地・半乾燥地を除くと緯度が高いほどNPPが小さくなることが示された。このように、NPPの分布の実態が明らかになり、この推定方法を用いて、NPPの全球分布を時系列的にマッピングすることが可能になった。

なお、本研究は科学技術庁総合研究「炭素循環に関するグローバルマッピングとその高度化に関する国際共同研究」による。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010002660
カテゴリ 乾燥 炭素循環

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