タイの熱帯季節林における植生の変動機構と炭素の固定

タイトル タイの熱帯季節林における植生の変動機構と炭素の固定
担当機関 森林総合研究所
研究課題名
研究期間
研究担当者 高橋 正通
平井 敬三
田中 浩
浅野 透
田中 永晴
川崎 達郎
石塚 和裕
石塚 森吉
小林 繁男
発行年度 1999
要約 タイ西部の熱帯季節林では、タケが下層をおおうため森林は更新しにくいが、タケの枯死や野火が埴生変動の契機となった。植林は森林回復の手段として有効であるが、劣化した土壌は植林後直ぐには回復しない。天然林、二次林、草地では樹木による炭素蓄積は、ほとんど増加しないが、チーク植林地では炭素固定速度は大きかった。
背景・ねらい 熱帯地域における人口の増加に伴う森林面積の減少は、温暖化の促進や土壌の荒廃など地球環境にさまざまな影響をおよぼしている。またエルニーニョなどの数年に一度の地球規模にわたる気候変動が熱帯林の成立や消失に影響することが指摘されている。そのため熱帯林の動態と変化に伴う影響を評価するためには少なくとも10年以上の長期観測が必要である。熱帯林はどのように成立し、今後どのような森林に変化するのだろうか。また森林の動態は物質循環や環境に影響するだろうか。これらを明らかにするため、乾季と雨季が明瞭に区分されるタイの熱帯季節林で10年にわたり観測してきた。
成果の内容・特徴 タイ西部のカンチャナブリ県において、天然林、有用樹を択伐した二次林、耕作地が放棄されてできた草地、草地に植林された人工林に固定試験地を設け、植生の変化や植物の成長、植生の違いによる土壌や微気象の違いを観測した。

この地方の天然林は、樹高が40mに達するものもあるが、比較的樹木の密度は低く、疎林である。しかし、下層に繁茂するタケが地表面を被陰するため、地上の稚樹の生存率は低く、次世代の更新はほとんど進んでいないことがわかった。タケは数十年に1度開花し、枯死するが、運良く我々の観測中にタケの開花枯死が起こり、その変化を観測できた。タケが枯死すると林床が明るくなり、植生は野生のバナナなどが繁茂した。この時、樹木の稚樹の更新が進んだが、タケの回復も速く、5年程度で元の状態に戻ってしまった。また乾季には数年おきに野火が発生する。樹木の野火に対する耐性は樹種によって大きく異なり、これも植生の動態に影響する要因である(図1)。また放棄された草地には樹木が徐々に進入するが、その速度は非常に遅く、野火も入りやすいので、森林への回役は進まない(図2)。

一方、植生の変化と植物の成長は温室効果ガスである二酸化炭素の森林植生一土壌への固定と密接に関わる。天然林、二次林、草地の試験地では地上部バイオマス、すなわち、炭素蓄積量はほとんど増加しなかったが、チークの植林地では、地上部バイオマスの増加にともなう炭素固定速度は大きく、植林の効果が確認できた。また環境条件から光合成特性をモデル化し、樹木の二酸化炭素固定能の季節変化を推定したところ、乾季の午前中に最も速度が高いことがわかった。また土壌有機物として固定された炭素は、比較的安定なので、炭素貯留効果が高いが、チーク植林後10年程度では、土壌有機物の増加には結びつかなかった(図3)。一度荒廃した土壌の回復には長時間を要するといえる。

なお、本研究は科学技術庁海洋開発及び地球科学技術調査研究促進費の熱帯林変動とその影響等に関する観測研究による。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010002644
カテゴリ バナナ

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