林地を守る堆積有機物層

タイトル 林地を守る堆積有機物層
担当機関 森林総合研究所
研究課題名
研究期間
研究担当者 三浦 覚
吉永 秀一郎
山田 毅
森貞 和仁
発行年度 1997
背景・ねらい 針葉樹人工林では、近年間伐遅れなどで林地の管理がおろそかになり、環境保全機能や木材生産力の低下が懸念されている。このような林地の荒廃化は、林内雨による雨滴衝撃や表面流の発生によって土壌が侵食されるためであると考えられている。土壌の侵食を防ぐためには、堆積有機物層や林床植生などの地表を保護する被覆の存在が不可欠である。本研究では、堆積有機物層に注目し、その地表保護効果を明らかにすることを目的とした。
成果の内容・特徴 樹種が異なる森林における林床の被覆状態の相違を明らかにするために、間伐遅れのヒノキ林(32年生)、間伐遅れのスギ林(32年生)、壮齢アカマツ林(60年生)、落葉広葉樹二次林(42年生)の4種類の林冠が閉鎖した林分において、堆積有機物層と下層植生による地表被覆度の季節変動を調査した(図1)。4林分の中で、間伐遅れのヒノキ林の地表被覆度の低下は著しく、約50%にまで達していた。これに比べて、他の林分の地表被覆度は高く、とりわけ壮齢アカマツ林は年間を通じてほぼ完全に地表が被覆されていた。間伐遅れのスギ林と落葉広葉樹二次林の地表被覆度は、年平均値でそれぞれ94%と89%であった。いずれの林分においても、被覆の大半は堆積有機物層が占めていた。林冠の閉鎖により林内照度が低下して林床植生が衰退した森林では、地表の保護はもっぱら堆積有機物層に依存することが分かった。

堆積有機物層が林地表層の土砂移動に及ぼす影響を明らかにするために、地表被覆度が最も低かった間伐遅れのヒノキ林と最も高かった壮齢アカマツ林において、地表の移動土砂量の測定と堆積有機物層の除去試験を実施した(図2)。1996年6月の除去処理前は、壮齢アカマツ林の移動土砂量はヒノキ林の移動土砂量の約100分の1であった。これは、図1で示した両林分の地表被覆度の差が原因であると考えられた。除去処理後は、壮齢アカマツ林の移動土砂量は約100倍にまで急激に増加し、間伐遅れのヒノキ林対照区と同レベルに達した。また、壮齢アカマツ林の除去区では、土壌構造の発達程度の低下や粗大孔隙の減少など土壌物理性が悪化していた。以上の結果から、林床の堆積有機物層は土砂移動の軽減効果が高く、林地の保護に対して重要な役割を担っていることが明らかになった。

なお、本研究は農林水産技術会議事務局特別研究「人工針葉樹林における土壌劣化機構の解明」による。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010002594
カテゴリ 季節変動

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