てんさい直播栽培における初期生育障害の原因と対策

タイトル てんさい直播栽培における初期生育障害の原因と対策
担当機関 北海道立十勝農業試験場
研究課題名
研究期間 2000~2000
研究担当者 梶山 努
古館明洋
山神正弘
志賀弘行
中津智史
笛木伸彦
東田修司
有田敬俊
発行年度 2000
要約 てんさい直播栽培における初期生育障害の主原因は土壌の低pHである。対策として、石灰質資材の全面全層施用により作付け前の土壌をpH5.8以上に矯正することが必要である。その上で石灰質資材を作条施用すると、収量向上が期待できる。
背景・ねらい 近年、道内ではジャガイモそうか病などの土壌病害への懸念から畑土壌の酸性化が進行している。このことから、輪作を基本とする北海道畑作では他作物への酸性障害が懸念されている。このような中、近年普及しつつあるてんさい直播栽培において、初期生育障害が全道各地で発生しているので、その原因を解明し対策を提案する。
成果の内容・特徴
  1. 初期生育障害(1996~2000年)は全道の直播栽培面積の1.6~4.0%で発生した。
  2. 初期生育障害は、発芽状態が良好であっても6月以降にスポット状または圃場全面に発生し、甚だしい場合には個体が枯死し廃耕に至る。障害個体の特徴は、(1)本葉2~5葉・草丈5~10cm程度で生育が停滞、(2)葉色はやや薄い、(3)葉縁部が赤~赤褐色、(4)根がわい化し褐変症状である。
  3. 初期生育障害発生圃場の80%以上で土壌pHが低く(畦間pH≦5.5または株間pH≦5.0)、初期生育障害の最大の原因は土壌の低pHである(表1)。
  4. 土壌の低pHによって初期生育障害を受けたてんさいの個体は6~7月までの間に枯死あるいは生育停滞し、その結果収穫株数及び1個体根重が減少する。このため収穫期には糖量で最大76%、平均37%減収する(表2)。
  5. 現地実態調査を基に生育障害地点の土壌pHの頻度分布を検討した結果、畦間pH5.8以上の領域での障害地点数は全体の約10%以下であり、畦間pH5.5~5.8の領域には障害地点の約20%が分布した(図1)。これらを根拠として土壌pH指標を提案する(表3)。
  6. 石灰質資材の全面全層施用は土壌pHを上昇させ、初期生育障害を回避し、生育・収量向上にも効果がある(表4)。石灰質資材の作条施用は初期生育障害を軽減し、生育・収量を向上する効果があるが、作条施用のみでは初期生育障害を回避できるほどの効果はない(表4)。これらのことと、さらに土壌pH指標(表3)から、てんさい直播栽培の初期生育障害を回避するには石灰質資材の全面全層施用により作付け前の土壌pHを5.8以上に矯正する。その上で石灰質資材を作条施用することが収量向上に有効である。
成果の活用面・留意点
  1. 土壌pH指標は全道に適用可能である。
  2. てんさい直播栽培のためにはpH5.8以上が必要である。ジャガイモそうか病等が危惧され、やむを得ない場合であってもpH5.5以上を確保し、さらに障害軽減のために石灰質資材を作条施用する。
  3. 酸性矯正は適切な石灰質資材量を求めてから実施する。

平成12年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名及び区分
課題名:てんさい直播栽培における初期生育障害の原因と対策(指導参考)
カテゴリ 収量向上 直播栽培 てんさい ばれいしょ 輪作 わい化